日々のこと
光合成を増やすための取り組み
ミスト装置による飽差管理
植物は葉からCO2、根から水分を取り込み、太陽からの光をエネルギーにして糖を作り生育します。
葉からCO2を取り込むためには、気孔が閉じていては体内に取り組むことはできません。そこで気孔を閉めないために必要になってくるのが、飽差管理になります。
飽差とは、空気中にあとどれくらい水蒸気が入る余地があるかのことをいいます。適度な飽差(3~6g/㎥)の時は気孔が開き、水分を蒸散したり、CO2を体内に取り組み光合成が高まり生育が促進されます。乾燥しすぎの場合には気孔を閉じ、湿度が高すぎる場合には蒸散が行われなくなり、植物が根からの水分を吸い上げなくなります。このことからも、適切な飽差管理をすることで、CO2を最大限取り込み、根からの水分を十分に吸い上げ、光合成の好循環がうまれます。
炭酸ガスを株元への局所施用
CO2は光合成の原料となります。植物が光合成を行い、CO2を取り込んでいくとハウス内のCO2濃度は下がっていきます。植物は、CO2が大気濃度(400ppm)を下回ると光合成量が著しく低下するため、ハウス内のCO2濃度を大気中と同濃度にしていく。CO2は濃度差によって拡散していると考えられています。ハウス内にCO2を均一に循環させるため、適正な静圧を保つ計算のもと、特注の穴あきダクトを用いて株元に局所施用をしています。
ヒートポンプによる温湿度管理
バラは、花を切ることで次の芽が動き出します。花を切った後、積算温度が1000度程度になると次の花が咲くと言われています。積算温度とは一日の平均気温をある特定の日から合計したものなります。1日の平均気温が20℃の場合、50日で花が咲き出荷できます。目標の1日の平均気温になるよう、夏場は夜間冷房・冬場は夜間暖房します。温度や湿度の状態を考え、冷房と暖房を同時に行い、温度・湿度維持をすることもあります。天候不順で病気の発生リスクがある場合や、1日の平均気温を保つために日中でもヒートポンプを活用することもあります。
夏場は日没後から積極的に冷房を開始し、転流を促進します。転流とは、光合成で作られた糖を生長点や花、根に送り(転流)、新しい葉や花芽の器官を作り植物を大きくしていきます。転流は植物体温度の低いところから高いところへ糖が移動します。冷房することでハウス内の温度を下げ、植物体温度の高い器官に栄養を送ります。
複合環境制御システムによる温室管理
刻一刻と天候は変わります。天候の変化により、今バラにとって何が不足しているのか、何が過剰になっているのかを把握する必要があります。そのため、温湿度、日射量、飽差、CO2濃度等様々な情報を収集できるデータロガーHappiMinder(画像1)によって可視化されたデータをもとに、天候に合わせた管理をしています。日射量によってカーテンを開閉したり、湿度状況からミスト装置の飽差値の変更などを行います。複合管理制御システム(画像2)を活用することで、ミスト装置・炭酸ガス制御・ヒートポンプ・天窓・カーテン等の遠隔操作が可能となり、ハウスに居なくても、スマホ1つでデータロガーHappiMinderから情報を集め、状況に合わせて機器を動かします。
バラに適度な負荷をかけることも
切り花は、自分で栄養を作り出すことはできません。そのため、ハウス内を常に適切な環境にしていると環境が変化したときに順応できなくなる可能性があると考えます。
日々一定時間バラに負荷(ストレス)をかけるような環境を作り、切り花になってからも環境に順応できるようなバラ作りをしています。
伊勢の水
宮川は、三重県多気郡大台町と奈良県との県境の大台ケ原山が水源となっています。山地に降った大量の雨が伏流水(地下深くまでしみこみ、1000年以上の長い年月をかけて水に溶ける鉱物を洗い流し、井戸水や湧き水として地上に出る)となり、超軟水となって大量に流れ出てきます。一般の水道水の硬度が50~60㎎/ℓに対し、3~5㎎/ℓの数値しかなく、水の粒子が細かく、吸収されやすい性質を持っているのが特徴です。
水は自然環境の過程で浄化されますが、自然浄化力を上回る量の有機物や有害な物質が循環プロセスに入り込むと水質汚染につながります。水中の微生物は有機物を分解する働きをしますが、分解する際に酸素を必要とします。この時の酸素の量を「BOD:生物科学的酸素要求量」といいます。水が綺麗な時は分解するときの酸素量は少なくてすみます。BOD値が10㎎/リットル以上で悪臭等の発生がみられますが、宮川の水は0.5㎎/リットルという全国でもトップレベルの水質を安定的にキープしています。国土交通省の一級河川調査において宮川は過去17回水質1位を獲得しています。